最近読んだ本から



続けざまに読んだ本がある。熊谷達也の小説。何気なしに本屋で手にとってみたのが「まほろばの疾風(かぜ)」。これが実におもしろい。8世紀末に大和朝廷に立ち向かった東北の蝦夷アテルイの物語。壮大なスケールで自然と共生する彼らの生き様は感動ものだ。
そして、第131回の直木賞を受賞した「邂逅の森」。「漂白の牙」、「ウエンカムイの爪」、「山背郷」、「荒蝦夷」とすべて日本狼やヒグマなどの動物との交流と戦いが主題あるいは伏線となっている。自然の美しさ、凶暴さ、そしてそれらの自然と人間との共生をテーマとして熊谷達也は書き続けている。彼の姿勢には共感するものが多い。そのために次々と新しい本を買ってきては読み進めてきたのだ。熊谷達也はもともと仙台の生まれ(1958年)なので、東北の民族学(マタギなど)にも詳しい。そういう知識、生活、方言などが小説に生かされている。彼は理科系の大学出と聞いているが、1997年に「ウエンカムイの爪」で小説すばる新人賞を受賞してから作家デビューをしている。そのときから彼の姿勢は変わっていないように思える。これからも頑張ってほしい作家の一人だ。
2005/02/26