最近読んだ本から



最近は横山秀夫に嵌っています。かれの小説は警察や新聞記者の世界を描いたものが多いが、そこに繰り広げられる人間ドラマはどれも感動させられる。今回読んだ本の中では「クライマーズ・ハイ」が最高に良かった。結構厚い文庫本でしたが、2日間で読んでしまいました。それだけ惹きつけるものがありました。物語は1985年夏に起こった御巣鷹山航空機事故を題材にして地方新聞の記者が主人公になっています。JALの同機に乗っていた坂本九ちゃんが当時話題になった事故でした。500人以上の犠牲者を出しながら若干の生存者がいたのを驚きと喜びでテレビを見ていたのを思い出します。飛行機事故を題材にしながら親子の葛藤、報道とは何かといった問題を正面から取り扱ったもので、事故当時、横山秀夫が勤めていた上毛新聞社での経験を纏め上げたものと言えますが、上梓するまで何年も置く必要があったようです。それだけ渾身の作品に仕上がっています。
「臨場」、警察組織では事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいいます。「終身検視官」の異名を持つ主人公は、他の者たちとは異質の「眼」を持っていて事件を解決していく。そんな警察の物語がぐいぐいと読者を引き込んでいきます。
「深追い」も短編集の集まりですがそれぞれの人間ドラマには考えさせられました。映画にもなった「半落ち」に通ずるところがあります。

小説とは打って変わって中島 岳志の「インドの時代」は 現在のインドの激変する政治・経済・宗教・生活を追っています。日本と同じように受験戦争があり、ソフトウェアでは世界一の実力を持っているにもかかわらず、今もってカースト制が支配する世界。戸惑い逡巡する「21世紀の大国」インドの内面に鋭く迫った作品です。彼の「中村屋のボース」は傑作で、「インドの世界」はその後に出版されたものです。

「生命と地球の歴史」(丸山茂徳・磯崎行雄)は地球の誕生と生命の進化との絡み合いを宇宙的視野で最新のデータから解き明かしています。初期地球で巨大隕石の落下が相つぎ、大気、核、マントル、海洋が作られていきました。中央海嶺上で熱水から栄養をもらって誕生した生命。変動する地球と生命 は、密接な関係を持ちながら現在までの歴史を刻んできました。プルームテクトニクス、プレートテクトニクスと分子生物学の最新研究が描き出す地球46億年、生命40億年の新たな変遷像。物として捉えていた宇宙に生命を重ね合わせて息吹を吹き込んだ作品と言えるでしょう。
記:2007/7/16