【 物理光学 】



  ●光波     light wave
           光という用語を用いる場合に、特に波動性を強調する必要
           があるときに用いる。

  ●波面     wavefront
           光波が伝搬するときの同一位相面(等位相面)。

  ●波長     wavelength
           光波の位相が2πラジアン異なる2点間の距離。

  ●波数     wave number
           単位の長さに含まれる波の数で波長の逆数。1/λ。

  ●偏角     angle of deviation
 
        光学系において入射光線と射出光線とがなす角。
 
  ●最小偏角   minimum angle of deviation
           (1)分散プリズムなどの偏角が最小になる場合の偏角。
           (2)分散プリズムなどの偏角が最小になる状態。

  ●透過     transmission
           光がその単色光成分の周波数を変えずに媒質を通過する現象。

  ●透過率    transmittance
           透過光の放射束又は光束Φtと入射光の放射束又は光束Φi
           との比(Φt/Φi)。量記号τで表す。
           一般に百分率で表す。

  ●振幅透過率  amplitude transmittance
           透過光の振幅Atと、入射光の振幅Aiとの比(At/Ai)。

  ●吸収     absorption
            放射エネルギーが物質との相互作用によって他のエネルギー
           に変換する現象。

  ●吸収係数   absorption coefficient
           媒質が光を吸収する程度を表す量。
           次の式の中のαをいう。I0を入射光量とする。
            I=I0×exp(−αx)

  ●吸収率    absorptance
           物質によって吸収される光の放射束又は光束Φaと、物質に
           入射する放射束又は光束Φiとの比(Φa/Φi)。
           一般に百分率で表す。

  ●散乱、拡散  scattering , diffusion
           光が極めて小さい凹凸のある反射面に入射する場合、又は
           極めて小さい粒子を含む媒質の中を通過する場合に、光の
           進行方向が空間的に多くの方向に変わる現象。

  ●散乱角    scattering angle
           光の散乱において、散乱光の方向と入射光の進行方向とが
           なす角。

  ●分散     dispersion
           (1)光が物質中を伝搬する場合光学的性質が波長によって
              異なる現象。
           (2)媒質の屈折率が放射の単色光成分の周波数に応じて異
              なる現象。

  ●光の強度   intensity of light
           光波が媒質の中を伝搬する場合、エネルギーが流れる方向に
           垂直な単位面積を単位時間に通過するエネルギーの時間的平
           均値。
           これは、光波の振幅の絶対値の二乗の時間平均値に比例する。

  ●半値幅    half-width
           山形の分布曲線において、山の最大値の半分に対応する分布
           の幅。

  ●モアレ    moire
           二つの規則的な模様の重なりによって生じるあらい模様。

  ●位相差    phase difference
           光路差を角度の単位で表したもの。
           位相差=(2π/λ )×光路差
           λ:真空(実用的には空気)中における光の波長

  ●位相速度   phase velocity
           光波の位相一定の面が伝搬する速度。
           結晶光学では法線速度ともいう。


干渉・回折
  ●干渉     interference
           二つ以上の光波が同一点で重なりあって互いに強めあい、
           又は弱めあう現象。

  ●コヒーレンス度 degree of coherence(coherence factor)
           光波の干渉性の度合いを表す量。コヒーレンス度lγlは、
           0≦lγl≦1である。

  ●干渉性    coherence
           互いに干渉することができる光波の性質。この場合、
           コヒーレンス度lγlは、lγl≒1である。

  ●非干渉性   incoherence
           互いに干渉しない光波の性質。この場合、コヒーレンス
           度lγlは、lγl=0である。

  ●部分干渉性  partial coherence
           干渉性と非干渉性の中間の光波の性質。この場合、
           コヒーレンス度lγlは、0<lγl<1である。

  ●干渉じま   interference fringes
           光の干渉によって生じる明暗の(又は色のついた)しま

  ●干渉次数   order of interference
           干渉する二つの光波の光路差を波長で割った値。


  ●白色干渉じま white light fringes
           白色光源を用いたとき、光路差が零の状態で生じる色の
           つかない(零次の)干渉じま。

  ●等厚干渉   interference of equal thickness
           小さい角をなすくさび形薄層に入射する場合、この境界
           面付近に厚さの変化に応じて干渉じまが生じる現象。

  ●等傾角干渉  interference of equal inclination
           平行平面層に種々の傾角を持った平行光線束が入射する
           場合、その傾角に応じて干渉じまが生じる現象。

  ●ニュートンリング Newton rings
           曲率半径の異なる二つの球面の接触部分付近に現れる同
           心円状の等厚干渉のしま。

  ●繰返し反射干渉法 multiple-beam interferometry
           向き合った反射率の高い二面間で、繰返し反射した光の
           干渉を利用し、鮮鋭な干渉じまを得る方法。

  ●回折     diffraction
           光が物体の影の部分に回り込む現象

  ●回折角    angle of diffraction
           回折光線が回折格子の面の法線となす角。

  ●自然光    natural light
           偏光特性が検出されない光

  ●偏光     polarized light
           光波(電気ベクトル)の振動方向が規則的な光。
           直線偏光、円偏光、楕円偏光がある。

  ●部分偏光   partially polarized light
           偏光と自然光からなる光。

  ●直線偏光   linearly polarized light
           光波(電気ベクトル)の振動方向が同一平面内に含まれ
           る光。平面偏光ともいう。

  ●円偏光    circularly polarized light
           光の進行方向に正対する観測者から見た場合、光波(電気
           ベクトル)の振幅ベクトルの先端が円運動するもの。右
           (左)回りのものを右(左)円偏光という。

  ●だ円偏光   elliptically polarized light
           光の進行方向に正対する観測者から見た場合、光波(電気
           ベクトル)の振幅ベクトルの先端がだ円運動するもの。
           右(左)回りのものを右(左)だ円偏光という。


結晶・偏光・複屈折
  ●一軸結晶   uniaxial crystal
           光学軸を一つ持つ結晶。
           例えば、水晶、方解石の結晶がこれに属する。

  ●二軸結晶   biaxial crystal
           光学軸を二つ持つ結晶。
           例えば、雲母の結晶がこれに属する。

  ●正結晶    positive crystal
           結晶内で常光線の速度が異常光線の速度よりも大きい結晶。
           例えば、水晶。

  ●負結晶    negative crystal
           結晶内で常光線の速度が異常光線の速度よりも小さい結晶。
           例えば、方解石。

  ●複屈折    double refraction
           結晶その他の異方性物質に入射する光が互いに垂直な振動
           方向をもつ二つの光波に分かれる現象。

  ●常光線    ordinary ray
           光が複屈折性の結晶に入射して二つに分かれる場合、光の
           速度が伝搬方向によらない光線。

  ●異常光線   extraordinary ray
           光が複屈折性の結晶に入射して二つに分かれる場合、光の
           速度が伝搬方向によって異なる光線。

  ●偏光角    angle of polarization
           屈折率nの媒質から屈折率n’の媒質に光が入射角θで入
           射するとき、
             θ=arctan(n’/n) の関係を満足する角θ。
           ブルースター角ともいう。

  ●偏光面    plane of polarization
           直線偏光における電気ベクトルの振動面(偏波面)に垂直
           で光の進行方向を含む平面。

  ●位相板    phase plate
           位相差を与えるために光学系に挿入する(等方性又は異方性
           の)透明板。

  ●旋光 rotatory polarization
           媒質の中を直線偏光が進行するとき、偏光面が回転する現象

  ●電気光学効果 electro-optical effect
           物質を電場の中に置いた場合、物質の光学的性質が変化する
           現象。ポッケルス効果、カー効果、シュタルク効果などがある。


  ●ポッケルス効果 Pockels effect
           結晶を電場の中に置いた場合、電場の強さに比例する屈折率
           の変化(Δn)を生じる現象。

  ●カー効果(電気光学的) (electro-optical)Kerr effect
           結晶を電場の中に置いた場合、複屈折が生じ屈折率の(Δn)
           変化が電場の強さの二乗に比例する現象。

  ●磁気光学効果 magneto-optical effect
           物質を磁場の中に置いた場合、物質の光学的性質が変化する
           現象。
           ファラデー効果、ゼーマン効果、コットン・ムートン効果などがある。

  ●ファラデー効果 Faraday effect
           物質を磁場の中に置いた場合、旋光性を現す現象。
           偏光面の回転角は、磁場の強さと光が透過する物質の長さと
           に比例する。

  ●光弾性 photoelasticity
           透明物質が弾性変形を受けて、複屈折を生じる現象。
           ひずみの解析に用いられる。


分光・スペクトル
  ●スペクトル  spectrum
           光を単色光に分解して波長の順に並べたもの、又はそれを表
           示したもの。
  ●原子スペクトル atomic spectrum
           原子が放出又は吸収する光のスペクトル。

  ●分子スペクトル molecular spectrum
           分子が放出又は吸収する光のスペクトル。

  ●線スペクトル  line spectrum
           主に原子スペクトルが示すスペクトルで、純粋に近い単色光
           からなるもの。

  ●帯スペクトル band spectrum
           (バンドスペクトル)
           分子スペクトルが示すスペクトルで、多数の線スペクトルが
           密集して帯状をなすもの。

  ●輝線スペクトル bright line spectrum
            原子が放出する線スペクトル。

  ●連続スペクトル continuous spectrum
            ある波長域にわたって連続的に現れるスペクトル。黒体放
            射、制動放射、再結合放射などによって生じる。

  ●発光スペクトル emission spectrum
            原子又は分子が励起状態から、エネルギーのより低い状態
            へ遷移することによって放出される光のスペクトル。

  ●吸収スペクトル absorption spectrum
            光が媒質に吸収されて生じるスペクトル。

  ●フラウンホーファー線 Fraunhofer lines
            太陽光のスペクトルに現れる吸収スペクトル線。
            d線、C線、F線などがある。

  ●スペクトル線幅 spectral line width
            スペクトル線の広がりによる幅。自然幅、衝突広がり、
            ドプラー幅、シュタルク幅などを含む。

  ●自然幅     natural width
            励起状態の平均寿命によるスペクトル線幅。

  ●ドプラー幅   Doppler width
            気体原子、分子などの熱運動のため、発光の線スペクトル
            が広がる幅。

  ●選択吸収    selective absorption
            光の吸収が波長に依存する現象。

  ●分光特性    spectral characteristics
            光に関する量を波長(又は周波数)の関数として表した
            もの。

  ●分光感度    spectral resposivity
            一定の単色光の入力に対する受光素子などの応答出力。
            量記号s(λ)で表す。


レーザー
  ●レーザー    laser
            光共振器内部の物質の誘導放出の現象を利用し、光波の
            増幅、発振を行わせることによって、干渉性及び指向性
            が良い、強い単色光を作り出す方法又は装置。
            利用する物質によって個体レーザー、ガスレーザー、半
            導体レーザーなどがある。

  ●個体レーザー  solid state laser
            イオンを含んだ個体誘導体をレーザー媒質として用いる
            レーザー。利用する個体誘導体の種類により、ルビーレ
            ーザー、ガラスレーザー、YAGレーザーなどがある。

  ●ガスレーザー  gas laser
            レーザー媒質として気体を用いるレーザー。気体レーザ
            ーともいう。

  ●半導体レーザー semiconductor laser
            半導体をレーザー媒質として用いるレーザー。接合によ
            ってキャリヤーを注入して励起する半導体レーザーを
            レーザーダイオード(LD)という。

  ●スペックルパターン speckle pattern
            レーザー光線のような干渉性がよい光で拡散面を照明す
            るとき、不規則に散乱された光の干渉によって生じる
            粒状性のあるパターン。