体のメンテナンス



車のチューニングやメンテと同様に人間の体も時々メンテが必要なようだ。老廃物を取り除き、栄養バランスを取り、適度な運動をして体の老化を防ぐ。ぼくはここ3年続けて今頃の時期になると手術をしている。最初は大腸に癌が出来たのを取り除き、次の年には、抗癌剤投与のためのポートを上胸部に埋め込む手術、そして今年は昨日、ポートからの点滴ができなくなりポートの取替え手術を行なった。点滴開始の前には必ず液が入るかどうかのテストをする。ところが、看護士が注射を押しても液が入っていかない。3度ばかり試みたがだめだった。うまくいくときは液がスムーズに入り、注射を引くと血液の戻りがある。これでちゃんとポートが機能しているかを確かめるのだ。チューブの途中に詰まり物があるのか、チューブがねじくれて液の流れを妨げているか分からない。
昨日は、そのため作用しなくなったポートを取り出し、反対側の上胸部に新しいポートを埋め直した。これで済むものと思っていたら、ちょっとしたハプニングが起こった。そのポートから心臓まで伸びているチューブ(カテーテル)の先端部が切れて心臓に残っているのがレントゲン撮影で発覚したのだ。長さ10cmばかりのチューブが心臓の中に浮いている像がはっきり写っている。そのままにしておくと血管に詰まったりするため、どうしても摘出しなければならない。チューブが途中から切れるというのは初めての症例らしい。まったく有難くも無い。チューブの取り出し作業は腰のあたりから静脈にカテーテルを差し込んで心臓まで入れていく。チューブを見つけるのがなかなか手間どっていたがやっと見つかり、カテーテルの先端に取り付けた環をチューブに掛け縛り付けて引っ張り出す作業をする。動いてるチューブに輪投げをするような感じだ。それでも4〜50分くらいかかって何とか取り出すことができた。これがうまくいかなければ大掛りな心臓手術が必要だったらしい。まあ、何とかうまくいって良かった!すべての手術が部分麻酔であったため、出来事がすべて鮮明に耳や眼から入ってくる。医者のやり取りが手に取るように分かるのも良し悪しかもしれない。うまくいっている時はいいが、そうでないときは不安が募ってくる。まあそれでもうまくいったので文句はない。チューブが途中から切れた原因については病院からメーカーに問い合わせることになっている。白血球がチューブを異物と見なして攻撃してくるのか、あるいは赤血球の鉄成分がチューブのもろさに何らかの影響を与えているのかは分からない。人間が作った機器に永遠性はありえないとしても、いかに安全に機能し長持ちさせるかは機器メーカーが常に念頭において置くべきことだと思う。人の命がかかっているのだから。カテーテルでの作業中、ポートの埋め込みをしてくれた外科の小川先生が常に付き添ってくれて、心臓の女医先生に助言を与えてくれていました。普通なら科の違うところには外科の先生が付き添うということはないらしい。これには女医先生も心強く感じていたようだ。今回は朝の9時から16時過ぎまで計3ヶ所の手術に及んだが入院することもなく帰宅することができた。最近の医学の進歩はすごいものだと思った。病院のベット数が足りないことも関係しているのかもしれないが、日帰り手術が多くなったと聞く。
高田渡ではないけれど、医者と病気と上手に付き合うことが健康の秘訣かもしれないとつくづく思う長い一日だった。
記:2006/12/9