ある数値、そして癒し



もうすぐ、一年になろうとしている。大腸ガンを患って手術したときから。順調に回復していたのは確かだ。今年の8月の定期的な検診の折、血液検査をした。その結果、腫瘍マーカーのひとつであるCEAが上昇しているのが分かった。そして再び大学病院での諸検査が始まったのでした。大腸の内視鏡検査、胃カメラ、CT、種々の血液検査などなど毎週のように仕事の合間を見て通ったのでした。しかし今のところ原因はつかめていない。自覚症状的には、尿の出が少し悪くなっていること、便秘気味なこと、臀部や腰の痛みがあるなどの事を考えると前立腺があやしいと個人的には考えている。ネットでこれらの症状に合う病気を調べた結果ではあるが、それやこれやで今度は、この辺の検査が始まろうとしている。ひとつの数値が生活スタイルまで変えてしまう怖さが今の世の中にはある。確かに、それだけ病気の発見率が高くなるということでもあるのだが。それと数値はある程度の確率を表しているとも言える。腫瘍マーカーが増えたからといって腫瘍があるとは限らない。マーカーは血液中に放出されたある生成物の量を測定しているに過ぎない。他の要因でその量が増えることもあるからだ。
検査というものは、決して気分のいいものではない。精神的に参らないように自分なりに工夫するより仕方がない。精神的に負けたら病気になるというのがぼくの心情だ。病気なら病気でもいい、うまく付き合っていく方法を考え、自分の内部の免疫システムを高めていくしかないように思えるのだ。星空をのんびりと眺めること、温泉に浸かって体をほぐすこと、そして音楽を聴くこともそのひとつの療法になる。今、前の入院の時に力づけられたGWANさんのCDを聴いている。確かに気分が落ち着いてきて元気が出てくる。再びGWANさんに癒されている自分を発見するのでした。ガンにはGWANさんが特効薬なのかな(笑)。
2005/9/28 記
その後のこと
 直腸から取り出した組織にガン細胞が見つかった。これは直腸の壁面が赤くなっているところがあったため念のために生検にかけられたものだった。医師もまさかと驚いていた。これがCEAを上昇させていたようだ。そのためこれから治療が開始されることになる。切除か放射線治療か化学療法なのかはこれからの詳しい検査で決めるという。再びガンとの戦いかと少し疲労を覚えているが、考えようによっては病巣がわかって治療の目処が立ってきたということにもなる。いい方向に考えたいと思う。最近の臀部あたりの痛みを早く取り除いてほしい気持ちの方が強い。通院になるのか、入院になるのかはこれからの判断にゆだねるしかない。前立腺の方は腫瘍マーカーのひとつであるPSAの判定では白と出たのでこちらは一安心している・・・。

気持ちを楽しい方に持っていくために、いろいろ工夫する。本もそのひとつ。皆さんもご存知だと思うけど、「星の王子様」の新訳が矢継ぎ早に出版されている。以前の内藤さんの訳には分からないところもあってなんかしっくりこなかった。そこで池澤夏樹さんの本を読んでみた。これはいい。訳がやさしくわかりやすい。今まで納得できなかったところもすんなりと理解できた。
2005/10/4 記

さらに、その後のこと
前立腺の方は白だったので、こちらは安心。そして治療は抗がん剤の48時間連続点滴治療ということに決まった。5FU/アイソボリン+イリノテカン(or オキサリプラチン)。胸のところに点滴をするための器具(ポート)を埋め込むための簡単な手術をするという。入院は10月20日から一週間ということだ。その後は経過をみながら通院治療ということになる。ガンとは長い付き合いになりそうだ。
2005/10/19 記


腫瘍マーカー正常値一覧

  現在知られている腫瘍マーカーを上げれば次の通り。どういう生成物を観察するかによって種々のマーカーが考えられている。正常値はあくまでも平均的な値で、個々人によって正常値には差があることになる。そのため、腫瘍マーカーはひとつの可能性を表しているに過ぎない。また正常な人でも数値が0と言うわけではなくて、ある値を持っている。ということは人の体の中にはガン細胞を抱えているということだ。それがある瞬間に上昇するのは体の弱い部分が狙われるからだという。

マーカー名 正常値 対象となる主な病気
ACT 21-38mg/dl 脳腫瘍・白血病・胃癌・肺癌
AFP 10ng/ml以下 肝細胞癌・転移性肝癌
BCA225 160U/ml未満 原発乳癌・再発乳癌
BFP 75ng/ml以下 原発性肝癌・胆道癌・膵癌・腎癌・前立腺癌・睾丸癌・子宮体癌・卵巣癌・肺小細胞癌・白血病
CA15-3 30U/ml以下 原発乳癌・再発乳癌
CA19-9 37U/ml以下 膵癌・胆道癌・消化器癌・卵巣癌・子宮体癌・肺癌
CA50 35U/ml以下 肝癌・胆道癌・消化器癌・卵巣癌・子宮体癌・肺癌
CA72-4 4.0U/ml以下 胃癌・大腸癌・卵巣癌・膵癌・肺癌・肝癌・胆道癌・乳癌
CA125 35U/ml以下 卵巣癌・肝癌・胆道癌・膵癌
CA130 35U/ml以下 卵巣癌・子宮頚癌・肺癌・肝細胞癌・膵癌・胆道癌・子宮体癌・胃癌・大腸癌
CA602 63U/ml以下 CA130/CA125と同系
CEA 5.0ng/ml以下 結腸癌・直腸癌・膵癌・胆道癌・肺癌・胃癌・甲状腺癌・乳癌・泌尿器癌・子宮癌・肝細胞癌・食道癌・卵巣癌
DUPAN-2 400U/ml以下 膵癌・胆道癌・肝細胞癌・食道癌・胃癌・大腸癌
HCG-β 0.2ng/ml以下 胞状奇胎・絨毛癌・異所性HCG産生腫瘍
IAP 500μ/ml以下 胆嚢癌・神経芽腫・白血病・上顎癌・食道癌・膵癌・卵巣癌・腎癌・肺癌・胆管癌・口腔癌・尿路性器癌・大腸癌・甲状腺癌・悪性リンパ腫・胃癌・膀胱癌・睾丸癌・前立腺癌・子宮頚癌・肝癌・乳癌
ICDH 3-10U/l 肝癌・転移性肝癌
KMO-1 5300U/ml以下(8倍未満) 膵癌・胆嚢癌・胆管癌・肝癌・胃癌・大腸癌・卵巣癌・肺癌
αMarogloblin 120-320mg/dl 造血器腫瘍・骨転移を伴う前立腺癌・末期癌
NCC-ST-439 7.0U/ml以下 膵癌・胆道癌・胃癌・卵巣癌・子宮体癌
NSE 10ng/ml以下 神経芽細胞腫・肺小細胞癌・乳癌・卵巣癌・食道癌・胃癌・膵癌・大腸癌・甲状腺癌・褐色細胞腫・ガストリノーマ・インスリノーマ・カルチノイド
PAP 3.0ng/ml以下 前立腺癌
PIPC 160ng/ml以下 前立腺癌の骨転移
PIVKA-U 40mAU/ml未満 細胞癌
PSA 3.5ng/ml以下 前立腺癌
PTHrP 1.1pmol/l以下 高カルシウム血症を伴う悪性腫瘍・成人T細胞白血病
SCC 1.5ng/ml以下 子宮頚癌・膣癌・外陰癌・皮膚癌・食道癌・肺癌・上気道癌・頭頚部癌・奇形腫・膀胱癌
sICAM-1 75U以下 膵臓癌・胆嚢癌・胃癌・β細胞白血病・ATL
SLX 38U/ml以下 肺癌・膵癌・胆道癌・卵巣癌・食道癌・胃癌・大腸癌・肝癌・子宮癌
γ-Sm  4.0ng/ml以下 前立腺癌
SP1 4.0ng/ml以下 絨毛癌・卵巣癌・睾丸腫瘍・肺癌・乳癌・消化器癌
SOD 150ng/ml以下 卵巣癌・肝癌・胃癌・白血病
Span-1 30U/ml以下 膵癌・胆道癌・肝細胞癌・胃癌・大腸癌・食道癌・肺癌・悪性リンパ腫
STN 45U/ml以下 卵巣癌・胃癌・大腸癌・膵癌・肺癌
TK活性 5U/I以下 急性骨髄性白血病・急性リンパ性白血病・悪性リンパ腫・悪性腫瘍
TPA 70U/I以下 乳癌・肺癌・胃癌・大腸癌・原発性肝癌・胆道癌・膵癌・膀胱癌・前立腺癌・睾丸癌・卵巣癌・子宮頚癌・甲状腺癌・肉腫・悪性黒色腫・リンパ腫・白血病
YH-206 25U/ml以下 膵癌・胃癌
エラスターゼ1 400ng/ml以下 膵癌
サイトケラチン19フラグメント 3.5ng/ml以下 肺癌・食道癌・直腸癌・卵巣癌・肺癌・子宮体癌
サイロブロブリン 5−30ng/ml 甲状腺癌
シフラ21-1 2.0ng/ml以下 肺扁平上皮癌・食道癌・胃癌・大腸癌・卵巣癌・肝癌・子宮癌