新たな物語



ゲド戦記で知られるル=グィンが新たな物語を書き始めた。「西のはての年代記」として「ギフト」が第一冊目である。続巻は来年に出版される予定という。静かな語り口の中にも人の心の奥底が事細かに描かれているのはゲド戦記と同様である。物語の派手さはないが読んでいると癒される物語である。

主人公、オレックは少年だったころ父から聞く話が好きだった。それは「盲目のカッダード」の話であり、「ダネットへの襲撃」の話だった。そしてどの話にも一族の〈ギフト〉が語られた。〈ギフト〉は力。一族によってその力は異なり、オレックの家は〈もどし〉のギフトをもたらされていた。「なされたことをなされる前にもどす力、つくられたものをつくられる前にもどす力」、「破壊する力」のギフトはとても強いものだ。父から、ギフトの継承者としてオレックは育てられる。しかし、なかなか〈ギフト〉の力を示さなかった。その時をじりじりと待つオレック……。

これからの展開が待ち遠しいシリーズだ。
記:2006/10/29