板橋区の光学産業



都営三田線・板橋本町駅を降りて、望遠鏡の工場に通ったときからすでにうん10年が経っています。当時、天体が好きで望遠鏡を作って販売する会社に入りたくてここを選びました。ドリルを使って部品に穴を開けたり、タップでねじを切ったり、油まみれの仕事が連日続きます。加工が終わった部品は塗装に回され、部品が揃った段階で組み立て作業に入ります。最後に製品をふきあげて梱包すれば製品が出来上がりです。こんなことをある記事を読んで、ふと思い出しました。
 板橋区が発行した「板橋区リーディング企業ガイド2007」に「板橋区の光学産業」が特集で組まれていました。この冊子は板橋区内に工場や販売拠点を持つ会社をピックアップして紹介するのが主な目的ですが、その中で私の大先輩に当る斎藤彰さんが板橋での双眼鏡の歴史を紐解いています。斎藤さんは私の掲示板にもユニークな視点からたびたび投稿して下さる方なので、ご存知の方も多いでしょう。
昔は東武東上線大山駅近くの双眼鏡の工場を管理していた方ですが、望遠鏡でもユニークなものを設計されています。オズマ80とかカスタム経緯台やタイタン赤道義や観測ドームなども手がけていました。とにかく発想豊かな方でいろいろと教えていただきました。
 これを読むと私が勤めていたより遥か前の板橋の様子がよくわかります。光学器械一つを作るのにもいかに多くの工場の手助けが必要かがわかります。レンズ研磨屋さん、芯取り屋さん、コーティング屋さん、塗装屋さん、アルマイト屋さん、プレス屋さん、それに名板の彫刻屋さんや印刷関係など数え上げればきりがありません。そういったすべてのコンビネーションがうまくいって初めて良い製品が出来上がります。一つとして疎かにはできません。双眼鏡は100点くらいの部品から成り立っていますから管理も大変だったと思います。そんな製造現場やこの業界の内情がこれを読むとよく分かります。
 この冊子は板橋区役所に問い合わせれば実費(700円+送料)で入手できますし、ネット上からPDFファイルでダウンロードもできます。興味ある方は覗いてみてください。
斎藤さんの文「板橋区の光学産業」(2006/12/29、掲示板に掲載されたもの)

東京光学器械(現・トプコン)の本社工場。
この地から板橋区光学の歴史が始りました。
昭和57年6月撮影(資料:東京光学五十年史)

記:2007/4/17