木辺さんの書


1990年に亡くなられた木辺成麿さんは、お坊さんであるよりも、反射鏡の磨き名人として天文仲間では知られている。ぼくが現在使っている20cm反射望遠鏡の主鏡と斜鏡も木辺さんの作品である。その木辺さんが書かれた書をある方から譲り受けた。

お寺の中を案内していただいた
「辰宿列張(しんしゅくれっちょう)」と書かれている。これは「千字文(せんじもん)」の中の一句である。辰は天の十二宮、宿は二十八宿を意味しているから「星座」と言い換えてもいい。「星座は、弦を強く張ったように連なっている」という意味になる。

千字文は梁の武帝の命により、書の基本になる一千文字を一字もだぶることなく四字一句のまとまりで二百五十句を集めて詩としたもので、周興嗣(AD470年〜521年)の苦心の作である。

  【千字文】

  天地玄黄 (てんちげんこう)
  宇宙洪荒 (うちゅうこうこう)
  日月盈昃 (じつげつえいしょく)
  辰宿列張 (しんしゅくれっちょう)
  寒来暑往 (かんらいしょおう)
  秋収冬蔵 (しゅうしゅうとうぞう)
  閏余成歳 (じゅんよせいさい)
  律呂調陽 (りつりょちょうよう)
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木辺さんは、お坊さんとしての号を「宣慈」という。

鏡を磨く木辺さん
2002/10/5記