北方 謙三



北方 謙三の三国志(全13巻+読本)と水滸伝(全19冊+読本)はあまりにも有名であり、多くの人に読まれているという。吉川英治の三国志(全8巻)は読んだが、まだ北方謙三のは読んでいない。これを読んでみたいと思っているが、なかなか手が出ない。それというのも、その長さである。吉川英治のときもかなり苦労したのを覚えているので、これを遥かに超える冊数に圧倒されてしまうのだ。それと作家のタッチをつかんでおかないと長編にはなかなか挑んで行けない。そこで、読みはじめたのが、南北朝時代の「楠 正成」であり、中国は宋の時代の楊家の人々を描いた「楊家将」とその続編である「血涙」である。正成という、あまり取り上げられない人物の物語は新鮮でなかなかおもしろかった。しかし、「楊家将」には及ばない。これは北方謙三あってはじめて開花した物語のように思える。もともとの中国の物語があって、それをもとにしているということであるが、本家本元よりもおもしろいとその評価が高い作品である。確かに宋といういままで取り上げられなかった国の物語は楠正成同様新鮮で引きつけられるものがある。父楊業を中心として、その子供たちの魅力に満ちた生き方に感動してしまう。戦闘場面の描写はまるで眼の前に繰り広げられているように展開されていく。さらに、人物の内面、考え方がよく書きつ連ねられていて引き込まれていく。ぜひ一読をお勧めする。三国志もきっと同じように面白いのだろうなと思いつつ、手にする日を楽しみにしている。近々ということだけしか言えないが、自分の気持ちが高まったときに一気に読んでみようと思っている。
記:2009/11/3