黒山


越生(おごせ)の梅林を右手に見てさらに奥に車を走らせると、鉱泉が沸く黒山に至る。そこは杉が多く、暗い森を形成している。
朽ちた木には、苔や羊歯が載り、壮大な盆栽を作り、新たな自然を創出している。根はおそらく幾年もの年月をかけて朽ち、土に帰っていくのだろう。その土からまた新しい生命が生まれてくる。こんな風景には地蔵がよく似合う。
 こども抱いた地蔵
立松和平の「木喰(もくじき)」の風景が目の前にあるような感じだ。かつて微笑仏を彫りながら回国した木喰上人は、円空とは違った作風の木彫り仏を残している。もともと石仏を作る経験のあった木喰が木彫りに転じて1000体を彫る祈願をたてる。五穀を絶ち、火を通した物を食することを禁じた戒めを守りながら、全国行脚をする木喰。

黒山三滝
木喰がここを通ったわけではないが、こんな道をたどり、時には寺の軒下を借りながら回国聖の旅を続けたのだと思う。こんなことを考えながら、山道を歩いていると、小鳥のさえずり、川のせせらぎ、木々のささやきが聞こえてくる。いっぱい空気を吸い込むと心の中が洗われてくる。
2002/2/24