火星に生命は?




 1996年8月7日、NASA(アメリカ航空宇宙局)は、「火星から飛来した隕石の中に36億年以前に誕生した生命の痕跡らしいものを発見した」と報じた。南極のアランヒルズ(頭文字をとってALH)という場で1984年にT番目に見つかったので「ALH84001」という名前が付けられている。この発表を行なったジョンソン宇宙センターのデビッド・マッケイ博士とスタンフォード大学のリチャード・ゼア教授は、この隕石の詳細について次のように語っている。

「この隕石は、中に閉じ込められていた二酸化炭素や窒素などの成分比率が地球や月などとは違って火星大気の組成と同じであることやその他の証拠から、火星で生まれたものであることがわかりました。さらに放射性同位元素の分析から今から45億年前に火星で作られたことが分かります。火星は地球と同じような時期に作られたと考えられているので、火星が生まれてから約1億年経った頃のものということになります。今から1500万年くらい前に火星に、彗星か小惑星のたぐいが衝突し、その衝撃で弾き飛ばされ宇宙に飛び出しました。そして1万3000年前に地球の南極に落下したものを、1984年に発見したものです」。

       隕石中に発見された生命の痕跡?

この隕石の過去の履歴を述べた後、発表の核心である部分に触れてきた。「この隕石のわずかに亀裂の入った部分を詳しく調べてみると、プランクトンや植物などが死滅した後に作られる有機物が6種類と、さらに電子顕微鏡で見てみるとシアノバクテリアというラン藻類の形に似たものが見出されました。大きさは20〜100ナノメートル(1ナノメートルは100万分の1ミリ)というチューブ状の非常に小さな化石です」。
確かに形は、オーストラリアのノースポールで発見された35億年前のシアノバクテリアの微化石とそっくりと言える。しかし、まだ、その化石からアミノ酸などの生体に関係する有機物は見つかっていない。それと、発見された有機物は、生物が関与しなくても化学反応的にできることもあるという。火星にかつて生命が存在したかどうかまだ決定はできないが、火星探査に大きな弾みをつけたことは確かだ。