流れ星を見たことはありますか?



ある町の成人式で講師として招かれた人の話。その人は後ろに髪を結んだいつもの姿で壇上に上がり話始める。おとなの目は何かうさんくさそうな眼で見ているように感じながら、

「君たちの中で、今までに流れ星を見たことのある人は手をあげてください」
ザワザワッと会場が揺れた。手をあげたのは三分の一ぐらいだった。これには周囲のおとなたちがまずびっくりした。
「みなさんの三分の一ほどしか、流れ星を二十歳になるまで見てないようですが、二十歳になるまで流れ星を見ることができない環境や文化、社会とは、いったい何を意味しているのでしょうか?・・・」

その時、おとなたちの顔もいっせいに僕の方を向いた。

              
新潟の十日町でミティラー美術館の館長をしている長谷川時夫さんの話である。インドのミティラー地方には、今も母親から娘へ伝えていく絵がある。線画で表現された神々や文様を無心に描き続ける彼女たち。長谷川さんは、それらの絵が消失していかないようにと日本に美術館作った。廃校になった校舎を改造しての美術館である。
つまようじの先に墨をつけて細い線で書き連ねて行くその文様は何とも言えず心に響く。長谷川さんの中に宇宙への思いがあったからこそミティラー画にひかれたのだと思う。
さて、あなたは、流れ星を見たことはありますか?
「宇宙の森へようこそ」(地湧社刊)
2002/1/27