ブラックドロップ現象


金星の日面通過、第二接触と第三接触のときに起こる所謂「ブラックドロップ」現象の原因については、今もって確定的な説明がなされていない。今年の6月8日に見られた金星の日面通過のときに多くの観測がなされ、この現象についていろいろな意見が出されたが未だに決着を見ていない。ブラックドロップとは下の写真(この写真ではわずかに伸びているのが分る)のように金星と太陽の淵の間に伸びた影ができる現象。
撮影:青木満さん  

この現象に対してはいろいろな説が出されている。

1.大気のシンチレーション説
2.望遠鏡の解像度不足説(球面収差、色収差、コマ収差)
3.太陽の周辺減光説
4.金星大気説


同じ時間に写された写真には、ブラックドロップらしきものがまったく写ってないものもある。これをどう説明すればいいのだろうか?原因はひとつではなくて、複合的なものとも考えられる。

ここで参考になる写真を紹介しよう。これは誰にでも実験できる。腕を伸ばして空の明るい方に向ける。そして親指と人差し指を離した状態からしだいにくっつけていくとおもしろいことが見えてくる。
指と指の間がつながったように見える。これは細い隙間があるときに起こる光の回折現象。ブラックドロップ現象は「金星の黒い本体と太陽の淵から広がる暗黒空間によって作り出された小さな隙間で引き起こされる回折」がひとつの原因とも考えれるのではないだろうか。とは言っても、これですべてが解決されたわけではない。いろいろな説の複合効果も考えるべきだと思う。

望遠鏡の球面収差説も一理はある。解像の悪い望遠鏡では、二つの近接した星がくっついたように見えるからだ。
蜃気楼という現象をみなさんもご存知と思う。下の写真のように太陽が沈むときに下側に蜃気楼で出来た太陽像がくっ付いてやや伸びた太陽像になることもこの一種(この写真では、海が盛り上がっているのにも注意してほしい)。これと似たことが太陽大気によって、日面通過のときにも起こらないだろうか?

 「空と色と光の図鑑」(斎藤文一、武田康男著、草思社刊)より

太陽の周辺減光説も捨てがたい。金星大気を太陽面を背景として見たとき、太陽の淵の方は中心部に比べて暗く見える。その暗い背景に対して金星の大気の上層部まで見やすくなることは考えられる。そのために淵に向って金星大気の黒い影が伸びているのではないか?

さて、皆さんはどうお考えだろうか?掲示板にでも皆さんの意見を述べていただくとおもしろいと思うのだが。
2004/07/17