星になった九ちゃん



 
by Akira S.
 

      火星と木星の間には多くの小天体があることが知られている。惑星にしては大きさが小さくて、直径が数kmから1000km(地球の半径は約6400km)程度しかないため、「小惑星」と呼ばれている。軌道がはっきりしているもので現在およそ1万個、その他の小さいものまで含めると3万個以上あるのではないかとみられている。
 初めて、小惑星が発見されたのは、1801年のこと。当時知られていた惑星は、太陽から近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星の6個だった。そして、当時知られていた経験法則に「チチウス・ボーデの法則」というのがあった。それは、太陽から地球までの距離を1としたときに、それぞれの惑星までの距離が、0.4、0.7、1、1.6、(2.8)、5.2、10という数字で近似できるという法則であるが、(2.8)に相当する天体が当時知られていなかった。そこでその惑星を見つけようと努力がなされた結果、2.77の位置に未知の天体が発見された。これが1801年に発見された「ケレス」、直径が1000kmほどの小さな天体だった。これが法則を満たす目的の惑星と思われたが、その後、距離が2〜3.5の間に多くの天体が発見されたため、これらを総称して「小惑星」と呼ぶことになった。
 小惑星は、発見され、多くの観測から軌道が決定されると、「小惑星****番」というような番号が、国際天文連合によって付けられる。

 話は変わって、1993年9月13日の夜のことである。北海道北見市郊外に観測所を持つアマチュア天文家の渡辺和郎さんと円館金さんによって16.5等の未確認天体が発見された。この天体は時間を隔てて二重露出されたフィルム上で発見されたもので、後に小惑星であることが正式に認められた。軌道決定後、「小惑星6980番」という番号が付けられた。番号が確定した小惑星には固有の名前をつけることが学会で認められている。
小惑星「6980」には「Kyusakamoto」と名前がつけられた。
 この名前には次のようないきさつがある。飛行機事故という不慮の事故で、若くしてこの世を去った歌手「坂本 九」さん。と言っても、若い世代の人は知らないかもしれないが・・・。九さんは、「上を向いて歩こう」(昭和36年)などの歌で知られ、同じ歌が海外で「スキヤキ・ソング」の名前でヒットし、日本初のミリオンセラーとなった。
「6980」という数字には、九さんの「9」、九さんの歌の作詞をした永六輔さんの「6」、それに作曲家の中村八大さんの「8」が含まれている。そこで「Kyusakamoto」(九 坂本)と付けられたのだ。名付け親は、天体写真家の藤井旭さん他と聞いている。
 小惑星「Kyusakamoto」は、直径が数kmという小さな星だ。まるで星の王子様が住んでいるような星であるが、4.8年の周期で永久に太陽を回り続けていくことだろう。


 他にも個有名として、1989年に発見された「7122番」には「Iwasaki」という名前が付けられている。宇宙画で知られている岩崎一彰さんである。