◆月の錯視 


                                    
月の錯視
 月が2つ、夜空に輝いているなんて幻想的でしょ
う!火星のフォボス、ダイモスよりも形がいいです
ね!でも、そんなことを示すためにこの絵をお見せ
したのではありません。
次のような経験はありませんか?
 月や太陽が東から昇ってくる時や西に沈む時の
方が異常に大きく感じませんか?
果たして月の大きさが見える方向によって違うの
でしょうか?
月は、手をいっぱいに伸ばしたときに5円玉の穴の
中に入るような大きさに見えます。時間を変えて同
じ日の月をぜひ観測してみてください。       
いがいにも、同じ大きさなのに驚くことでしょう。  
2000年以上昔から[月の錯視]と呼ばれている現象です。人によって大きさの違いはありますが、地
平線に近い月の方が、かなり昇った月よりも1.2倍から1.5倍くらい大きく感じられます。この原因は
どこにあるのでしょうか? 心理学、生理学、物理学それぞれの学者がいろいろな説を出しています
が今だに決着がついていません。
それでは、その中からいくつかの説を紹介しましょう。       

[天空偏平説]
1738年、イギリスのR・スミスは彼の著[光学大全]の中で、無限の天空も丸天井に見えるが、天頂
方向の方が比較するものがないため地平よりも近づいて見える。そのため、天空は一様な丸天井で
はなくて、上下に押しつぶされた偏平状に見えるとして、月はその偏平面に投影されているように感じ
ると考えました。そのため、同じ月でも遠くに投影面がある地平の方が大きく見えるとしました。

[眼球運動に伴う視線説] 
イギリスのE・G・ボーリングは1936年ころから、この問題に取り組み始めました。彼は目の視線方
向を変えることによって大きさの違いを感じると考え、自ら実験装置を作り視線の変化によるデータを
集めました。

[地上物体説]
地平方向には、いろいろな物体があります。これらの物体と比較するときの方が、何もない天空を眺
めるときよりも大きく見えるという考え方です。アラビアの光学者アルハーゼンやL・カウフマンらの考
え方です。