星雲・星団ガイドブック



星に興味を持ち、望遠鏡でいろいろな星を探して歩くのは楽しいものです。誰でも望遠鏡を手にしたときにはじめに見るのは月ではないでしょうか。クレーターの凹凸がくっきりと見えたときの感動はいつまでも心に残っています。月から木星や土星へと興味が拡大していくにつれて、淡い星の世界へと導かれていきます。すばるやオリオン大星雲などを見て奥深い宇宙に酔いしれていきます。そして、さらに淡い星雲・星団の世界へと入っていきます。この世界に入っていきますと、どうしても案内書が必要になります。ほとんどの人がいろいろな星雲・星団の写真を見ていて、こんな天体を自分の眼で見てみたいと思うのは当然のことでしょう。しかし、ここが天文をあとあとまで続けていけるどうかの分かれ道になります。多くの人は、写真に見る美しい姿にあこがれ、望遠鏡でのぞいてみてがっかりしてしまいます。望遠鏡で見えている姿はほとんど色もなく、やっと見えるか見えないかの世界なので、こんなものかと思ってしまうのです。しかし、ここで冷静に考えてみればひとつの考えに思いが至ります。それは、写真と肉眼との違いです。写真は、長い時間瞳を開きっぱなしで光を集め蓄積することができるために、淡い天体もはっきりとその姿を現してくれます。それに比べて肉眼は、いかに優れた光学機械とはいっても、一瞬の光しかとらえることしかできません。光を貯めることができないのです。そのため、肉眼では写真と違って淡い姿しか見ることができないのです。もちろん、望遠鏡の口径が大きくなるほど明るく見えてきます。そのため、星雲・星団の観測には大きな口径の望遠鏡が好まれるわけです。しかし、小望遠鏡には、それなりの楽しみ方もあるわけで、6cmクラスの望遠鏡でも星雲・星団を楽しむことができます。そんな世界をスケッチを通して紹介しているのが、大野裕明さんの「いろいろな望遠鏡による見え方がわかる 星雲・星団観察ガイドブック」です。じつは、この本は30年くらい前に出版された「見ておもしろい星雲・星団案内」の改定復刻版なのです。今の時代、デジカメが発達したために、そちら関係の本は多く、自分の眼で探して確かめるというのは、一見時代遅れのような印象を与えます。しかし決してそうではなくて、これが天体観測の基本であり、この姿勢こそいつまでも持ち続けてほしいことだと思います。大野さんとは同い年ということもあり、共感する部分が多々あります。人当たりのいい大野さんは現在、福島県田村市の「星の村天文台」の台長をされていて、天文普及に努めています。皆さんもこの本を片手に星雲・星団の世界に挑戦してみてはいかがでしょうか。
いろいろな望遠鏡による見え方がわかる 星雲・星団観察ガイドブック」(大野裕明 著 、誠文堂新光社 発行)

星のおおのさま
・・・大野裕明さんのホームページです。
記:2009/8/16