都会の星空



光溢れる街中で星空はどのくらい見えるのだろうか?
月とか明るい惑星であれば問題なく見える。2等星くらいの恒星までしか見えない場所では星座を形作ることが難しい場合もあるだろう。それより暗い星雲などは双眼鏡や望遠鏡を使わないと見えない。星雲でも明るいものであれば、かすかに見ることができる。例えばオリオン大星雲などは見えるがさらに暗いものになるとお手上げである。こういう天体を撮影するとなると少しテクニックが必要になる。
都会の明かりには水銀(Hg)とナトリウム(Na)から出る光が圧倒的に多い。それらの光が空を明るくし星を見えなくしている。それらの明かりの成分を除去することができれば空は暗くなり淡い星雲も見えるようになる。

 一昔前はコダックの103aEや水素増感した2415というフィルムと赤フィルター(R60やR64フィルター)を組み合わせて撮影する方法を使っていた。右の写真は、東京の三軒茶屋近くに住んでいたときに写したバラ星雲である。この場所からは渋谷方面の街明かりで空はいつも白っちゃけていた。肉眼ではまったく見えなかったものがこういうテクニックを使うと右のように浮かび上がってくる。ただ赤フィルターを使うと赤い光より波長の短い光をカットしているため光量が減ってしまう。その分露出時間をかけてやらないと露出不足になりうまく写ってくれない。
 現在は赤フィルターの代わりに光害カットフィルター(LPS-P2フィルターなど)を使えば撮影条件はぐんと良くなる。フィルターの透過特性を参考のために下に載せておく。不必要な街灯などの明かり(HgとかNaと書かれている輝線、これを光害輝線と呼ぶことにする)を選択的にカットしているのが分かるだろう。
R60フィルターを使ったときに、ほとんどの光害が除去されるということは下のグラフを見ると分かる。というのはR60の場合、約600nmより短波長の光(赤以外のすべての色と考えていい)をカットしてしまうためで、水銀(Hg)の一部を除いてほとんどの光害輝線がなくなるからだ。と同時に600nmより左側の青い部分をすっかり失ってしまうのでいかに光量が少なくなるかが分かるだろう。R64の場合は640nmが限界波長となる。


                  青い部分が透過される光を表している
        
バラ星雲
1980/2/16 20:13〜20:23 、NikonFM、135mm(F2.8)
103aE(D19 4min 18゜C現像) 東京、世田谷公園にて



 この写真を写している最中に、二人の警官が近づいてきて職務質問された。夜の公園にあやしい道具を持ち出して写しているので、痴漢と間違えたのだろう。無理もないか。望遠鏡が付いているし、カメラも載せているのだから・・・。
都会で観測する人はこんなことにも気を使わなくていけないので注意してほしい。

バラ星雲
 街明かりが残る住宅街の中でLPS-P2フィルターを使って撮影したバラ星雲を比較のために載せておく。
 ( 2004/01/20 22:14 600sec、Canon EOS Kiss Digital、f=200mm F4、LPS-P2フィルター、自宅にて 
記:2006/7/29