東西の宇宙観



以前、コーヒーブレイクで「日本人の宇宙観」という本を紹介したことがある(→こちら)。著者である荒川紘さんは静岡大学の科学思想史を担当している教授であるが、この本を2001年に出版してから4年経った今、新たに2冊の本を上梓した。
「東と西の宇宙観 東洋編」、「東と西の宇宙観 西洋編」。日本人の宇宙観を執筆している当時から世界の宇宙観を概観してみたいという願いがあったようだ。

前作に劣らず読ませる本である。二つの本を読み進めると、宇宙に対する捉え方の東西の差異と近似、東西の知識の交流と断絶が浮き彫りされてくる。
宇宙の創生、宇宙の構造についての考え方は、思想・哲学・宗教等によって捉え方が異なっている。当然、宇宙観はその時代の政治・思想・社会背景から自由であることは難しい。ガリレオをはじめとする多くの人々が時代思想の枠に無理やり押し込められるという憂き目をみてきた。しかし後の時代に生き延びたその思想は受け継がれて今日に至っている。
著者は言う「人間の外にむかった西の宇宙観が自然を支配する思想を生み出したのだが、東の宇宙観は人間の内に向けられていた。自然の支配ということではもともと東に勝ち目はなかった。しかし、いまその是非が問われているのは、自然の支配の思想である。地球上の全人類が、なお、<内からの勝利か、それとも外からの強大な死か>(岡倉天心)という歴史の岐路に立たされている」と。さらに「地球にどうしたら本来の美と真の豊かさをとりもどせるのか、・・・それを教えてくれるのが宇宙観の歴史ではないのか。」と。
(記:2005/12/23)