ワープする宇宙



ワープというと、宇宙戦艦ヤマトの空間移動を想像してしまいますが、ここで言うワープは歪曲したという意味で使われています。曲がった時空という意味です。今までの物理学では3次元空間と時間を一緒にした4次元を相手にしてきたわけですが、ここに来てさらに高次元の世界から眺める動きが活発になってきています。それが出てきた背景には、ひも理論という考えが世に現れたことが大きいと言えます。この理論によると10次元とか11次元という途方も無い高次元で物を考えています。これらの背景には素粒子物理学が大きく関わっています。4つの力の統一理論が物理学で今求められている重要な課題です。そこで一番問題になっているのは、重力が他の力と比べて異常に小さいということをどう説明するかにあります。

この本についての出版社のコメントは、
「宇宙は、私たちが実感できる3次元+時間という構成ではないら
しい。そこには、もうひとつの見えない次元があるというのだ。
もし、もうひとつの次元が存在するのなら、なぜ私たちには見えないのか? それは、私たちの世界にどう影響しているのか? どうしたらその存在を証明できるのか?
現代物理学の歩みから最新理論まで、数式を一切使わずわかりやすく解説しながら、見えない5番めの次元の驚異的な世界に私たちを導いていく。」

本を読み進んでいくにつれて、5次元の世界があってもおかしくないなと思えるようになります。一見、ジョディ・フォスター似のリサ・ランドールの話はおもしろく、不思議の国のアリスを連想させる物語になっています。そしてさらにおもしろいのは、ここで紹介されている理論が近い将来実験で証明される可能性が出てきたことです。スイスのジュネーブ郊外にあるCERN(Conseil Europeen pour la Recherche Nucleaire 欧州合同素粒子原子核研究機構)の実験結果しだいでは、今後の物理学に大きな変化もたらす可能性があります。CERNで建設中の周長27kmの地下トンネルを利用した新たな巨大科学プロジェクトLHC(Large Hadron Collider)がその役目を担っています。
   空から見たCERNのLHC加速器のトンネル
   (赤い円、実際には地下100mにある)

記:2007/10/6